その他 | 我電引水 | 水象舎

敦煌の敵は“砂”だった
 中国の敦煌(とんこう)は、北京から約2000km離れたところに位置し、「シルクロードの宝石」と呼ばれる仏教文化が栄えた地です。当初、砂漠に埋もれていた敦煌芸術を半世紀にわたって保護し、研究してきたのが常書鴻氏です。

 文化大革命の嵐の中で、常書鴻氏は筆舌に尽くせぬ残酷な弾圧に遭います。「敦煌の文物を盗んだ」などと無実の罪で追求されたこともあったといいます。

 常書鴻氏にとって最大の敵は何だったのか? それは“砂”でした。ちょっと予想外の答えですが、つまりこういうことです。

 周囲の砂漠から刻一刻と降りかかる“砂”。その一粒一粒は、取るに足らないものであっても、絶え間なく忍び込む砂は、石窟の壁を削り、重圧によって土砂崩れを引き起こします。ひとたび、気を緩めれば、貴重な遺産が砂の底に埋もれ、取り返しのつかない破壊につながってしまいます。

 常書鴻氏は、研究に研究を重ねた結果、土砂崩れを防ぐために植樹を行い、二重、三重の土塀をめぐらせます。その他にもありとあらゆる方法を試みたといいます。

 コスト削減を考える上で、大変、示唆に富んだエピソードだと感じ、紹介させて頂きました。

2004-06-29