ニュース | 我電引水 | 水象舎

クロマグロ、温暖化で産卵域縮小

 地球温暖化が今のペースで進むと、今世紀末には太平洋のクロマグロの主要な産卵海域で産卵に適した場所が縮小したり北上したりして、マグロの生息に深刻な影響が出る可能性があるとの研究結果を東京大の木村伸吾教授(海洋環境学)らのグループが25日までにまとめた。

 乱獲のため、ただでさえ厳しいクロマグロの資源状態が、温暖化によってさらに悪化することになりかねないという。

 太平洋のクロマグロは東から西まで広い範囲を回遊しながら成長するが、産卵場所は台湾の東部から奄美大島周辺にかけての狭い海域にほぼ限られている。

 研究グループは、温度を変えたクロマグロの稚魚の飼育実験を実施。この海域の平均水温に近い26度がマグロの成長に最適の温度で、これより6度近く水温が低くなっても生存率は変わらないが、水温が30度近くになると、ほとんどが死んでしまう可能性が高いことが分かった。

 次に、スーパーコンピューター「地球シミュレーター」による今後の温暖化と海水温上昇の予測結果を基にマグロの産卵海域の温度変化を解析すると、2099年には水温が28度より低い産卵に適した海域の面積が縮小し、生き残る稚魚の数が現在の37%になってしまうことが分かった。

 ただ、木村教授によると、このころには日本海にマグロの産卵に適した海域が形成され、ここがマグロの大きな産卵域になる可能性もある。

 木村教授は「この場合、日本海でマグロの親魚の漁獲量が増える可能性がある一方、日本、中国、台湾、韓国などの間での魚資源の奪い合いが深刻化することも考えられる」と話している。

【スポニチ 2006-12-25】